リセッションとは
リセッションとは、景気後退局面のことです。
資本主義経済での経済活動には景気の拡張期と後退期が数年を周期として交互に繰り返される景気循環があります。景気の拡張期の上限で後退に入る転換点を景気の山、その逆を景気の谷と言ったりします。
その山から谷までの間を指し、景気が低迷し不況にいたる過程の状態を指します。
また、景気が改善し好況にいたる過程の谷から山までを景気拡張局面のことをエクスパンションといいます。
リセッション(景気後退)を判断する指標は何?
リセッションの定義は各国により違いがあります。
日本のリセッション判断
- 日本では内閣府が毎月公表している景気の現状把握などのために作成された景気動向指数のディフュージョン・インデックス(DI)の値が、景気拡張局面では50%を上回り、景気後退局面(リセッション)では50%を下回る傾向があります。
ディフュージョン・インデックス(Diffusion Index)とは?
内閣府が毎月公表する景気動向指数の一つで、生産や消費、物価などの景気変動に関係する複数の指数を合成して算出される指数です。(以下DI)
- DIは0%から100%の間で変動します。
- 安として継続的に50%を超えれば「景気が上向き」、50%を下回れば「景気が下向き」と判断されます。
- 目先行指数、一致指数、遅行指数の3タイプがあり、市場では景気の先行きを示す先行指数に注目が集まっています。
- 景気動向指数の作成後も経済構造が変化するため、景気が一循環(谷→山→谷)するごとに採用系列を見直しており、現行系列は第15循環の景気基準日付確定時(2015年7月)に選定。
※内閣府が公表する景気動向指数には、景気変動の大きさや量感を測定することを目的としたコンポジット・インデックス(CI)というものもあります。
米国のリセッション判断
- 米国では2四半期以上連続の実質 GDP 成長率のマイナスを一般に景気後退(リセッション)としています。
- 最終的には米国の場合、全米経済研究所(NBER)の景気循環委員会が、重要な経済活動の衰退が経済全体に広がり、それが数カ月以上続いていれば景気後退(リセッション)と判断している。
全米経済研究所(NBER)とは?
NBER は民間の非営利機関だが、1961 年以降、商務省が NBER の景気判定を用いるようになって以来、政府公認の景気判定として扱われるようになった
景気減速と景気後退(リセッション)の違い
リセッションは景気後退局面のことですが、これと似た言葉に景気減速があります。
- 景気後退は景気がピークを迎えて谷に向かう局面なので、全体的に不景気でさらに景気が悪化している状態です。
- 景気減速は、景気拡大の局面ではあるもののその勢いが鈍化することをいいます。
リセッションの原因
それではなぜ、リセッションが起きるのでしょうか。
これを理解するには、景気循環の仕組みを知る必要があります。
景気は良くなったり悪くなったりを大きなサイクルで繰り返す構造になっています。
企業が商品やサービスを提供すると、それが売れます。利益を上げると企業はさらに人を雇用し、投資を拡大させます。そしてさらに売上が伸びて事業が拡大しますが、いつかそれが頭打ちになり、期待しているようには売れなくなります。
そこで企業は事業を縮小し、雇用削減を行うようになります。
こうした動きが経済全体に広がると景気が悪化して低迷期に入ります。これがリセッションです。
その後、不景気が底をつくと今度は商品やサービスを必要とする人が増え、再び景気が拡大していく流れになります。なお、景気には主に4つのサイクルがあると云われています。短い順に以下のようになります。
- キチンの波:40ヶ月
- 企業が在庫を調整する動きなどが短期的な景気変動を生み出します。
- ジュグラーの波:10年前後
- 朽化した設備や機械を買い替える設備投資などの需要が、景気の活性化を促します。
- クズネッツの波:20年周期
- 築物の建て替えや改修への需要が、景気のサイクルに大きな影響を与えます。
- コンドラチェフの波:50年周期
- 50年周期の景気サイクル。技術的な進歩やインフラの更新など、とても大きな規模の経済活動が景気に影響を与えます。
リセッションによる株価への影響
リセッションの影響が最も顕著に表れるのは、株価です。
企業の業績が悪化し、それは株価にも反映される傾向があります。
株価が大幅に下落したリーマンショックやコロナショックは、近年の主なリセッションです。
コロナショックをきっかけとするリセッションの主な原因は、パンデミックとそれによる後遺症のような影響です。それまで米国をはじめ世界の株価は堅調に推移していましたが、コロナショックによって経済の停滞を余儀なくされました。
ただし、コロナショックはパンデミックの問題さえ解消すればそれまでの堅調な経済を取り戻すスピードが速い、と予測されたためコロナショックによるリセッションは逆に「買い場」であるととらえる投資家も多くいました。
それではコロナショックが一服した感のある2023年の米国経済の見通しはどうでしょうか。
●雇用情勢の悪化と消費の冷え込みは時間の問題であり米国経済はまもなくリセッション入りを予想。
出典: 2023年の米国経済見通し | 三井住友DSアセットマネジメント 市川レポート
●ただ、景気は年央に向け失速も、その後は緩やかな成長が続き、リセッションは比較的浅いものに。
●物価の鈍化と失業率の悪化は緩やかなペースに、一段の大幅利上げと景気の悪化はサブシナリオ。
まとめ
リセッションとは、景気後退局面のことで、株価の下落が懸念されます。
しかし、リセッションからの回復に期待した株の「買い場」ともなり得ます。
今後は景気動向を注視しつつ、リセッションを踏まえた投資戦略を立て、長期的な資産形成に役立てることが推奨されます。
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